あのひと——少年10 谷川俊太郎あのひとを愛しただけでぼくの一生は終わってしまうだろうそのあと死んだぼくはあのひとの思い出に生きつづける あのひとの上にひろがる青空はぼくだけのものだったあのひとの頬を照らした太陽もぼくは誰にもわたさない 雪におおわれた山脈のむこうにあのひとの住む村があってそこであのひとは子供を生み孫たちにかこまれるだろう 幸せはまぼろしのようにはかなく化石のようにいつまでも地下にあるぼくにはもう見えているのだあのひとの静かなひとみが